涙の季節

「よく撮るよねえー、最近」

卒業まで後1ヶ月ちょっと。
私は異常に写真やプリクラを撮るOR撮りたがる。

友達はどうしてそこまで私が写真に執着するのかわからないようだ。

けれど私は、それでも理由は言わないで、
「撮ろう！撮ろう！」

ととにかく誘う。

多分理由は言ってもわかってもらえない。
だからいいの。
一緒に撮って、写ってください。

今まで何度も家が変わった。
学校が変わった。

私は何人の人に覚えてもらっているだろうか？

みんな言う。
「1回くらい転校とかしてみたいーー☆いいなあ
　もうずーっと同じ家だしあきたーーー」

「そんないいもんでもないよ」

いいなんて思ったこと1度もない。

「あいつとさー小学校から高校までずっと同じなんだよねえー
　もうなんであいつと、幼馴染なんだろー」

「いいな」

幼馴染・・。ずっと憧れていた。
私には一人もいないから。

小学校の友達で私のこと覚えてる人はどのくらいいる？
じゃあ中学は？
じゃあ高校は？

みんなの記憶に私はいるのだろうか？

ううん、いる人なんて少ない。
幼少の記憶は本当にみんなあいまいで
積み上げて積み上げて記憶になるもの。

積み上げる前にその土地から姿を消した私の事は記憶にならない。

だから私は写真をとる。

確かに私はその時ここにいたよ
ここであなたと笑ってたんだよ。
て証明できるものがなきゃやってらんないの。

みんなが忘れても
私だけは覚えてるの。
写真にとってずっとずっと思い出にするから。

私の存在を証明してくれる人、
それは私だけ。

将来私には夢がある。
家族ができたら、ずーっと同じとこに住むの。
子供がいたら、一生の友達を作って欲しい。
自分のふるさとを愛して欲しい。

全部私はつかめなかったから。
私もおさななじみが欲しかった。
いろんな地方の方言なんて別に使いこなせるようになりたくなかった。

ふるさとが欲しかった。

もう無理な話。
だから写真を撮るんです。